佐野雄太郎 / 警視庁公安部部長
佐野公安部長は、どこまで知っているのか
乃木卓の過去、知る者は
この記事には広告が含まれる場合があります。
第13話で野崎守が首謀者と判明したあと、次に見るべき人物として佐野公安部長の名が挙がっています。理由は「直属の上司だから」だけではありません。佐野は第1シーズンの時点で、決定的な情報を口にしています。
第17話で、野崎は自分の口で潜入だったと認めました。以下の本文は、野崎を拉致事件の首謀者とみていた第17話より前の考察です。経緯は第17話の考察まとめにまとめました。
第17話で、佐野は乃木家を訪ねてジャミーンに公安職員の写真を見せ、内通者の鈴木をあぶり出しました。部下について何があっても殺すなと指示しています。櫻井が佐野を善人と断じた理由は、第19話までに語られていません。
佐野公安部長は、野崎が別班員を拉致したことを知っていました。この記事で挙げた4つの立場のうち、知らなかったという線は消えます。
残るのは、泳がせていたか、野崎と同じ側か、乃木卓への負い目で動いているかの三つです。
さらにもう一点、佐野は新庄の遺体を検視させていません。国外で射殺された元公安の人間について、日本側が調べないという判断です。ここまで来ると、佐野が握っているものは野崎の件だけではありません(新庄は本当に死んだのか)。
放送後には、佐野こそが真の裏切り者で、鈴木祥はその手下だという説が広がっています。第13話で野崎が佐野の部屋へ入るのに合わせて鈴木がイヤモニを着けた、という指摘とつながる筋です。
私は泳がせていた線を採ります。裏切り者だとすると、野崎の拉致を知りながら止めず、遺体も調べさせないという二つの動きが、どちらも隠す方向で一貫しすぎます。隠したい人間は、ふつう一方だけを隠して他方では潔白を演じる。両方とも自分が判断したと分かる形で残しているのは、隠す気がないからです。
この見方を後押しするのが、第1シーズンの作法です。乃木がテントへ潜入していたことを知っていたのは、櫻井司令ただ一人でした。機密性の高い任務では、同じ組織の人間にも共有しません。
同じ形なら、野崎のシンシー潜入を知っているのも佐野と、ごく一部だけです。佐野が野崎の関与を知りながら動かなかったのは、知っていながら見過ごしていたのではなく、そもそも自分が枠を与えた側だからです。
そのうえで、佐野が誰の指示で泳がせているのかは分かっていません。野崎の行動が任務の一部だという含みが第14話でも残されている以上、この二人の上にもう一段あるはずです(野崎はまだ裏切っていない?)。
拉致に必要だった情報のうち、作戦の全体像は別班の内側にしかありません。そこを詰めた記事も置いています(櫻井司令は本物なのか)。
この記事で挙げた4つの立場のうち、泳がせていたという線が当たりました。第15話で佐野は、野崎がシンシーに潜入していること、樊林杏(ハン・リンシン)とつながっていること、シンシーの監視カメラが仕掛けられていることをすべて把握していたと述べています。
知りながら黙っていたのは、部屋が聞かれていたからです。説明すれば潜入が漏れる。だから疑われる位置に立ち続けた。
東条が自宅へおびき寄せ、別班が拘束して防衛省の地下へ運びました。味方に捕らえられて、そこで初めて説明できたという形です(第15話の考察まとめ)。
佐野の位置が確定しました。5年前、野崎のシンシー潜入を了承していたのは佐野です。この記事が採っていた「泳がせていた」という説は当たりです。
そして第16話で、佐野は乃木に対して5年前の経緯をすべて語り、公安と別班の共闘を決めました。櫻井が佐野を白と断じながら理由を言えなかった件は、まだ答えが出ていません(櫻井が断念したのは何か)。
佐野が明かした一言
第1シーズンで、野崎は乃木の経歴を調査し、京都府舞鶴市の養護施設で少年時代を送っていたこと、そして島根県奥出雲町において乃木家の家紋とテントのマークが酷似していることを確認します。
野崎は公安部長の佐野雄太郎(坂東彌十郎)に対し、乃木の父である卓がテントのリーダーであり、組織のマークと乃木家の家紋が類似していると報告しました。これに対して佐野は、乃木卓は公安部外事第1課の出身だと明かします。
この場面の意味は、VIVANT2を見た今のほうがよく分かります。
テロ組織テントの指導者は、元は公安の人間だった。そしてその事実を、公安部長は知っていた。部下から報告を受けるまで、言わなかった。
司令が佐野を白と断じた一言
- 第15話で、東条が佐野を自宅へおびき寄せ、別班が拘束して防衛省の地下へ連行した
- その尋問で櫻井司令は、佐野公安部長は人間を善と悪に二分したときの善人にあたると分かっていると述べた
- ただし理由は言いかねると続けている
- 佐野は野崎の潜入を知っていて、公安の部屋に仕込まれた監視カメラの存在も把握していた
- 公安外事第4課の和久井・鈴木・森田は、カメラの件を知らされないまま佐野の指示で動いていた
白だと断言できるだけの根拠を持ちながら、その根拠だけを出さない。ここに中身があります。
言えなかった相手を考えると、あの部屋にいたのは味方だけです。佐野を運び込んだのは東条で、警備は別班が固めている。漏れるのを恐れて伏せたのなら、あの場では説明が付きません。
残るのは中身の側の事情です。櫻井と佐野のあいだに、別班の部屋でも口にできない共有がある。この記事で私が採ってきた櫻井が佐野を取り込んでいたという見方は、ここで取り込みではなく、もっと前からの共有のほうへ寄ります。取り込みなら、いつ、何と引き換えに、という説明ができるはずだからです。
そして佐野の側も、部下にカメラの件を伏せていました。伏せ方が櫻井と揃っています(残る4人を置き直す)。別班と公安のトップが同じ形で情報を止めていて、そのあいだに野崎が置かれていた形です。
なぜ善人だと分かったのか
佐野を拘束する直前に、乃木がジャミーンに会いに行くカットが差し込まれている、という指摘が出ています。事前に佐野の写真を見せて善悪を確かめたのではないか、という読み方です。
これなら、理由を言いかねると述べたことに説明が付きます。子どもの直感を根拠にしたとは、あの場で言えません。
ただし私は採りません。ジャミーンが反応するのは善悪ではなく、バルカと本人にとっての利だと考えているからです(乃木の弱点、見分ける目)。その考察が正しいなら、佐野の写真では何も出ません。
もう一つ、確かめておきたいことがあります。佐野は乃木に嘘をついていました。野崎の潜入を知りながら、知らないふりをして通した人物です。それでも善人の側だと断じられている。
つまりあの場で使われた物差しは、正直さではありません。嘘の中身ではなく、その嘘が誰を守っていたかのほうを見ている。佐野が守っていたのは自分の立場ではなく、潜入中の野崎と、拘束された5人でした。この物差しなら、櫻井が理由を言いかねると述べたことにも別の説明が付きます。正直さで測っていないと認めることが、そのまま組織の運び方を明かすからです。
それでも、カットが差し込まれていること自体は材料です。映像で確かめられたら判断を変えます。
なぜ監視カメラを撤去しなかったのか
第15話で分かったのは、公安外事第4課の部屋にあった監視カメラ15個、そのボルトすべてにシンシーのカメラが入っていたことでした。外して回ったのは乃木と東条です。佐野は外していません。
佐野は野崎の潜入を最初から把握していました。潜入させる側が、相手の目が入っていることに気づかないままでいられるとは考えにくい。知っていて、残していたと読みます。
残す理由は一つです。見せたいものを見せるため。
シンシーの側から見た絵はこうなります。公安を監視できている。野崎は本当に日本を裏切った。別班5人の拉致にも成功した。どれも、こちらが見せた映像から出た結論です。野崎の裏切りを本物だと信じさせたうえで、中枢へ入れる。カメラは漏れ口ではなく、送り口として使われていたという形です。
同じ形は拉致にも当てはまります。5人を奪ったつもりが、5か国へ運ぶ過程で海外の拠点も協力者も輸送の道筋も、こちら側へ差し出している(別班員はなぜ5か国に分けられたのか)。最後に5人を取り返すなら、そのとき網ごと畳めます。
つまりシンシーにとって最大の失敗は、すべてうまくいっていると思っていることそのものです。監視していたつもりが監視させられていて、捕まえたつもりが自分の網を晒していた。野崎が残した天網という言葉の使い方とも噛み合います(第15話の考察まとめ)。
この考え方を採ると、野崎と佐野の作戦は時間と犠牲を先に支払う型だったことになります。別班5人が拷問を受けたことも、東条が脅されたことも、乃木が欺かれたことも、代金の側に入っています。
- 佐野がカメラの存在を知っていたと、作中で明言されてはいない
- 知っていて残すなら、乃木と東条に外させたことの説明が要る。作戦が次の段階へ進んだから、という筋なら通る
- 5人が受けた仕打ちを、計算のうちだったと言い切るには無理がある
公安は一度、乃木卓を裏切っている
第1シーズンで、ベキの本当の標的は日本にいる人物でした。内閣官房副長官であり、元公安部外事課の上原です。
作中の描写を並べると、こうなります。
- 乃木卓は公安部外事第1課の出身だった
- ベキとなった卓が復讐の対象としたのは、元公安部外事課の上原だった
- 佐野は卓の素性を知る立場にいた
公安という組織は、乃木卓に対して何かをしている。それが何であれ、卓が生涯をかけて復讐を志すだけのことが起きた。そして佐野は、その系譜の内側にいる公安部長です。
ここが佐野を「単なる上司」以上の存在にしています。
第1シーズンで指摘されている佐野の不可解な指示
放送後、第1シーズンを見返した視聴者から、佐野の行動をめぐる指摘が複数出ています。
- ブルーウォーカーの潜伏先へ新庄が踏み込もうとしたとき、野崎は「待て」と制止していたのに、佐野がGoサインを出した
- 結果として新庄は家宅捜索に失敗した
- 左右両隣の部屋に穴を開けているというカラクリを野崎が見破り、その考えを聞いたにもかかわらず、佐野は再度の突入をさせず解散命令を出した
- バルカから帰国した乃木を尾行する新庄が、乃木に何かを伝えようとしているように見える場面がある
私は映像を再確認していないため未検証としますが、事実であれば意味は明確です。佐野は太田の確保を二度にわたって妨げたことになります。
そして妨げた相手が、後に別班の情報処理を担うことになるブルーウォーカーでした。
第13話の一瞬 鈴木のイヤモニ
第13話で、野崎が電話で乃木にバンコクへ行くと伝え、佐野部長のいる部屋へ入っていく。そのタイミングで、鈴木祥がイヤモニを装着したという指摘があります。
この細部が正しければ、構図が反転します。
これまで公安内部の課員たちは、野崎の駒だと考えられてきました。第11話で乃木の自宅を張っていたのが和久井俊作と森田喜一であり、櫻井司令が「野崎が警護をつけたのだろう」と推察していたためです。
しかし鈴木が野崎の入室に合わせて聞き耳を立てたのなら、監視されているのは野崎の側です。
そして鈴木に指示を出せる立場にいるのは、その部屋にいる佐野です。
櫻井が佐野を取り込んでいた可能性
もう一つ、第1シーズンを通して読むと浮かぶ線があります。別班の司令が、公安部長を先に押さえていたのではないかという推測です。
- 第5話で乃木が「勘の良い野崎は、私をマークするのも時間の問題でしょう」と述べる
- これに対し櫻井は「いざという時は対応できるようにしておきます」と答えている
- 第6話以降、佐野は乃木に有利な指示や発言を繰り返し、野崎が呆れるほどだった
- 最終話では、抹消されていた乃木卓の記録を櫻井が入手し、乃木に渡している
「対応できるようにしておく」が何を指すのか、作中で説明されていません。丹後隼人の経歴を改竄することだと読むこともできますが、もっと単純に、公安部長を取り込むことだったのではないか。
そう読むと、第6話以降の佐野の不自然な後押しが一本の線でつながります。野崎が乃木の正体を暴こうとするのを、上司が組織の判断として鈍らせていたことになる。
抹消された記録の入手にも説明が付きます。国家公安委員長に掛け合うような話に、別班の司令が単独で辿り着けるでしょうか。公安側に協力者がいたと考えるほうが自然です。
別班と公安部のトップは、第1シーズンの時点ですでに繋がっていたことになります。そして第13話で分かったのは、その二人の間にいた野崎が裏切っていたという事実です。
上と下が繋がっていて、真ん中が抜けていた。この構図なら、佐野が野崎の暴走を止められなかった理由も、工作の痕跡が簡単に見つかった理由も、別の説明が立ちます。
公安は別班を疎ましく思っている
AIハヤトの分析の中で、公安部長は別班の存在に否定的だという趣旨の説明があったとされます。
これが正しければ、前の節で立てた「櫻井が佐野を取り込んでいた」という推測は、そのままでは通りません。取り込まれた相手が、同時にその組織を疎んじているという状態になるからです。
両立させる筋は一つあります。取り込まれていたのではなく、利用し合っていたという形です。
公安から見れば、別班は指揮系統の外にあって統制できない組織です。存在を認めながら排除したい相手に、協力するふりをして近づく。第1シーズンで佐野が乃木を後押しした動きも、別班を助けるためではなく、別班の中身を知るためだったと読めば筋が通ります。
この筋なら、第13話の構図も変わります。別班を売ったのが公安の理事官だったという事実は、個人の裏切りではなく組織同士の抗争の一場面かもしれません。野崎が動機を語らないのも、語れば公安全体の話になるからだと説明できます。
ただし、ここは憶測です。公安部長が別班に否定的だという点を私は映像で確認していません。ここが崩れると、この節はまるごと崩れます。
佐野の立場として考えられる4通り
以前に3つの可能性を挙げましたが、確定情報を踏まえて4つ目を加えます。
| 考察 | 成立条件と難点 |
|---|---|
| 知らなかった | 部下が別班潰しを主導していたことに気づかない公安部長になる。卓の素性を把握していた人物としては考えにくい |
| 泳がせていた | 接触先や資金ルートを追うため。鈴木のイヤモニと整合する |
| 野崎と同じ側 | 別班潰しが公安の組織的意思だったという推測。ただし佐野が野崎を監視しているなら成立しない |
| 乃木卓への負い目で動いている | 公安が裏切った男の息子を、公安部長として見ている。第1シーズンでの佐野の不可解な指示も、乃木側を守る動きとして読み直せる |
4つ目が有力に見える理由
佐野は、野崎に問われるまで卓の素性を言いませんでした。これは隠蔽とも読めますが、触れたくなかったとも読めます。
公安部外事第1課出身の人間が、国際テロ組織の指導者になった。組織にとっては最大級の汚点です。しかも復讐の相手は元公安の高官でした。この事実を知る立場にいる人間が、その息子である乃木の周囲で起きることに無関心でいられるとは考えにくい。
第1シーズンで佐野が太田の確保を妨げたのが事実なら、動機は「公安に太田を取らせないため」だったのかもしれません。太田は後に乃木の側で働く人物です。
そして第13話で野崎を監視しているのが事実なら、佐野は野崎の裏切りを既に把握している。乃木を守るために、乃木に近い人間を疑っている。
佐野の立場を見極めるポイント
この推測は、次の形で答え合わせができます。
- 第14話以降、佐野が乃木と直接接触するか。するなら味方側
- 鈴木・和久井・森田が誰の指示で動いているかが示されるか
- 乃木卓と公安の過去が改めて描かれるか。若き日の卓を演じる俳優が出演する以上、過去パートは描かれる見込み
佐野は歌舞伎俳優の坂東彌十郎が演じています。この配役で、部下の裏切りに気づかなかっただけの上司という役割は考えにくい。物語の後半で、佐野が何を知っていたかが明かされる場面は用意されているはずです。
佐野雄太郎の人物ページを見る
人物紹介は公式サイトの登場人物ページに掲載されています。
画像の転載は行っていません。リンク先の公式ページでご確認ください。
配信情報
第1シーズンの佐野の場面
卓が公安部外事1課の出身だと明かす場面は、第1シーズンの終盤にあります。第1シーズン全10話とVIVANT2はU-NEXTで見放題配信されています。
関連する記事
- 第17話は誰が誰を見ていたか
- ジャミーンは善悪を見抜けるのか
- 柚木薫は何者なのか
- AI鈴木は通用するのか
- 第17話の考察まとめ
- 第17話で残された謎
- 第17話の詳しいあらすじ
- 第18話のみどころ
- 第16話のみどころ
- 長野専務は裏切るのか
- 第15話の考察まとめ
- アディエルはなぜ戻ってきたのか
- 上原邸の火事で誰が死んだのか
- シンシーの狙いはジャミーンなのか
- 櫻井司令は本物なのか
- 長野専務・アリはシンシーの協力者なのか
- 野崎が入力した暗証番号は何なのか
- 薫とジャミーンは人質になるのか
- 第15話はどうなるのか 6つの筋で予想する
- AIハヤトの分析は信用できるのか
- 第14話の考察まとめ
- シンシーの狙いはフローライトなのか
- 野崎の動機は劉銘軒(リュウ・ミンシュエン)への弔いなのか
- 野崎の裏切りは乃木と同じ形なのか
- チンギスは第15話でどちらに付くのか
- 長野が「愛する人」を繰り返す理由
- 新庄は本当に死んだのか
- シンシーとは何か 樊林杏と中国公安部第六局
- 乃木は誰に報告していたのか
- 第1シーズンから置き去りの12項目
- 野崎潜入説はどこまで成立するか
- VIVANT2、まだ答えが出ていない謎
- 長野の妻=櫻井司令説はあり得るか
- 佐野・鈴木・森田・上原の立ち位置
- ポスターの英文は3年前の台詞だった
- 和久井俊作と、野崎の上にいた二人
- 野崎はまだ裏切っていない? 潜入説
- 「櫻井」という姓と奥出雲はつながっている?
- 長野専務は本当にバルカにいたのか
- 第11・12話の詳しいあらすじ
参考・出典
- 日曜劇場『VIVANT』第1シーズンおよび第11話・第12話・第13話の放送内容
- 日曜劇場『VIVANT』公式サイト 登場人物
- 佐野の指示と鈴木の描写については視聴者の指摘を整理したもので、映像は再確認していない(本文に未検証と明記)