VIVANT2 / ジャミーン
シンシーの狙いはジャミーンなのか
なぜ孤児院かたどる先
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第14話で、樊林杏(ハン・リンシン)が食いついたのは孤児院でした。資金源でも武器でも残党でもなく、孤児院です。
組織を調べる人間の質問としては、順番がおかしい。探しているのが建物ではないとしたら、何を探しているのか。
第16話で、シンシーの組織としての狙いはフローライトではなく核融合技術だと分かりました。樊林杏個人の理由として置いた孤児院の線は、第19話でエリシャの娘プリシャがテントに連れ出され、いまジャミーンと同じ9歳だと分かったことで、ジャミーンへ近づいています(プリシャ・ママドフとは誰か)。
この記事が立てた問いに、材料が一つ足されました。第1シーズンでアディエルが亡くなったあと、ノゴーン・ベキが「また一人にさせてしまった」と言っているという指摘です。私は映像で確かめられていません。
引っかかるのは「また」の一語です。この言い方が成り立つには、ジャミーンがそれ以前にも一人になっている必要があります。素直に読めば、ジャミーンはアディエルと出会う前から孤児だったことになります。
そうだとすると、この記事が置いた「シンシーが探しているのは施設ではなく人ではないか」という問いに、対象の側から答えが寄ってきます。孤児院にいた子どもで、出自が語られていない人物。条件を満たす人物として、ジャミーンは残り続けます。
ただし断定はしません。ベキは多くの孤児を引き取ってきた人物で、「また」が別の子どもを指している可能性も同じだけあります。ここは憶測のままにします(第16話で残された謎)。
確認できること
- 第14話で野崎は、ベキがテロで集めた金で孤児院の運営を続けていたと述べた
- それを聞いた樊林杏は目の色を変え、来てもいないメールを口実に席を外した。野崎はその不自然さに気づいている
- ジャミーンはバルカ共和国の少女で、第1シーズンで乃木が命を救い、以後は柚木薫がそばにいる
- 第15話から登場するチンギスは、テントが運営していた孤児院で育った内戦孤児
なぜ資金源でも武器でもなく孤児院なのか
テントを調べるなら、聞くべきことは決まっています。資金の出どころ、武器の入手経路、協力者、残党の所在、そしてベキの生死。諜報組織の質問として自然なのはそちらです。
ところが樊が繰り返し確かめたのは孤児院でした。しかも、その場で野崎に詳しく聞くのではなく、席を立って誰かに連絡を取ろうとした。
組織の任務なら、隠す必要のない動きです。隠したということは、組織の狙いとは別に、個人の理由がそこにあることになります。
探しているのは施設ではなく、そこにいた人
放送後には、シンシーが探しているのは孤児院という場所ではなくそこにいた誰かであり、その人物がジャミーンではないか、という説が広がっています。
この見方には強みがあります。同じ場面で野崎自身がテントの孤児院に何があるのかと口にしており、渡した側にも中身が見えていません。相手が何を探しているのか分からないまま、反応だけが返ってきた形です。
過去の記録を探しているなら、書類を当たればいい。人に何度も口頭で確かめるのは、いま現在どこにいるかを知りたいときの動き方です。
私は前に、孤児院はフローライト事業への入口だと書きました(シンシーの狙いはフローライトなのか)。組織の狙いとしては、いまもそちらを採ります。
ただし樊個人の反応は、資源の話にしては過剰でした。資源が目的なら、席を立つ理由がない。個人の理由のほうを人に置くと、あの数秒の説明が付きます。
ジャミーンの周りに人が集まりすぎている
ジャミーンの周囲を並べると、たしかに異常です。
- アディエル バルカで身近にいた人物
- 柚木薫 医師として付き添い続けている
- 乃木憂助 命を救い、以後も気にかけている
- 野崎守 バルカでの一件に関わった
- ドラム 助けた側の一人
- ノゴーン・ベキ 孤児を救うために組織を動かしていた
国家機密に関わる人物が、一人の少女を中心に並んでいる。かわいそうな子だから助けた、という説明だけで足りるのか。
順序を逆にすると、別の絵が出ます。全員が守っていたのではなく、重要だから全員が引き寄せられた。
「善悪を見抜く力」が持つ意味
ジャミーンには、人の善悪を直感で言い当てる描写が第1シーズンから置かれています。物語の中で、能力として強調されてきました。
ここが第2シーズンの要です。いまこの物語は、誰が本物なのかを問う話になっています。
- 新庄は本当に死んだのか。運ばれた遺体は本人か(新庄は本当に死んだのか)
- 櫻井司令は本物か(櫻井司令は本物なのか)
- 野崎は裏切ったのか、装っているのか(野崎の裏切りは乃木と同じ形なのか)
顔も声も経歴も作り替えられる世界で、直感だけが偽装をすり抜けるのだとすれば、ジャミーンはこの作品でいちばん厄介な存在になります。替え玉も変装も二重スパイも、その前では通用しない。
放送後には、第1話の家族の場面で薫とジャミーンの視線の向きが違うという指摘も出ていました。ジャミーンにだけ見えているものがあるのではないか、という説です。私は映像を確認していないので、視線の向きについては断定を避けます。
ジャミーンには奇跡の少女という呼び名が付いており、その理由がまだ明かされていない、という指摘が出ています。
そこから、過去に孤児院で危険な人物を見抜いて多くの子どもを救ったからではないか、という説が立てられています。
呼び名の由来が説明されていないのなら、それは回収されずに置かれている手がかりです。この作品は、意味の付いていない呼称を放置しません。
そして、爆発や病気から助かっただけで奇跡と呼ばれるのは、たしかに弱い。一人の生還ではなく、多数の生還に関わっていたのなら、呼び名の格と釣り合います。
もしその出来事にシンシーが関わっていたなら、樊林杏があの一語で席を立った理由も説明が付きます。孤児院という言葉が、自分たちが関わった一件を指していたことになる。
ただしこれは、当てはめれば通るというだけの話でもあります。呼び名の由来が語られるまでは、材料として数えません。
薫とドラムの役割が変わって見える
薫が保護役でドラムが監視役だった、という説も出ています。役割は違っても、二人ともジャミーンから離れないことが根拠です。
ドラムについては採りません。第14話で野崎の件を知ったときのドラムの様子は、演技として撮られていませんでした。
薫のほうは、扱いが変わります。薫には警護が付き、乃木との通話は日本側に聞かれていました。守るだけなら不要な処置です(長野が「愛する人」を繰り返す理由)。
日本側が薫を完全には信用していないのなら、その理由は薫自身にあるのか、薫が離れないでいる相手にあるのか。後者なら、監視の対象はジャミーンです。
名前がヘブライ語である二人
この物語の名前はモンゴル語が中心です。そのなかでヘブライ語の名を持つ人物が二人だけいます。エリシャと、ジャミーンの父アディエルです。
エリシャは旧約聖書の預言者で、意味は「神は救い」。死んだ子どもを生き返らせた人物として書かれています。アディエルは「神の飾り」。
ここから、エリシャの息子がアディエルではないかという説が出ています。アディエルはベキに育てられ、ザイールの自爆に巻き込まれて亡くなりました。死んだ息子の娘を探している祖父という形なら、シンシーがテントを追う理由も、条件が金で解決しない理由も一本になります。
詳しくはエリシャ・ママドフとは誰かで扱いました。樊林杏(ハン・リンシン)が孤児院という一語に反応した理由も、この筋なら説明が付きます。
同じ鉱石から、心臓と核融合炉が出る
フローライトとジャミーンが、材料のところでつながるという指摘が出ています。
フローライトはフッ素を取り出すためのほぼ唯一の鉱石です。そしてフッ素から作られるものに、次の二つがあります。
- PTFE。フッ素樹脂で、人工血管やパッチの材料になります。ファロー四徴症の手術で使われる材料です
- フッ化リチウム。核融合炉で燃料となるトリチウムを作り出す材料の一つとして扱われます
つまり同じ鉱石から、ジャミーンの心臓を治す材料と、核融合炉の材料が出てくることになります。
この一致は面白いところです。ただし、扱いには段を置きたい。
強いのは、作品の作りとして噛み合うことです。第1シーズンで少女の心臓を治す話をやり、第2シーズンで核融合の話をやる。その両方が同じ鉱石にたどり着くなら、バルカの地面から二つの物語が生えている形になります。この作品はそういう作りを好みます。
弱いのは、作中で一度もそう言われていないことです。フローライトが人工血管の材料だと語られた場面はありません。そして現実には、フッ素はごくありふれた工業原料で、ここから作られるものは無数にあります。二つを選んで並べれば、たいていの物語はつながってしまいます。
私は材料の一致は根拠として弱いと考えています。それでも書き残すのは、もし作中でこの線に触れたら、そのときは決定的になるからです。触れた瞬間に、ジャミーンと核融合が一本になります。
この説の弱いところ
- 樊はジャミーンの名を口にしていません。孤児院という語だけで人物を特定するのは、飛躍が二段あります
- ジャミーンが何を知っているのかが描かれていません。記憶に何かを預けられた描写は、いまのところありません
- 孤児院で育った人物として先に画面へ出るのはチンギスです。樊の反応がチンギスに向いている可能性のほうが、時期としては素直です(チンギスは第15話でどちらに付くのか)
三つ目が痛い。次の回に出てくる人物を差し置いて、まだ画面にいない人物を答えに置くのは早すぎます。
私の結論
組織の狙いはフローライト、樊個人の理由は孤児院にいた人、という二段構えを続けます。そのうえで、個人の理由の先にいるのがジャミーンだとは、まだ置きません。
いま言えるのはここまでです。樊は建物ではなく人を探している。そして孤児院で育った人物として最初に画面へ出るのはチンギスです。第15話は、その二つが重なる回になります。
ジャミーンについては、狙われる理由より使われ方のほうを見ています。偽装が主題になった物語に、偽装を見抜く子どもが置いてある。この配置が回収されないまま終わることは考えにくい。
第15話で確かめる点
- 樊が孤児院について誰に連絡したのか
- チンギスが孤児院の名簿や仲間の話をするか
- ジャミーンが画面に出るか。出た場合、誰の顔を見てどう反応するか
- 薫の警護と盗聴が続いているか
- 明かされていません。
- していません。第15話でチンギスが渡したのは、野崎から預かった紙でした。
- 第17話で出ました。写真を見て、和久井と内通者の鈴木に反応しています。
- 公安の会話を拾っていたのは部屋のカメラと内通者の鈴木で、第15話と第17話で明らかになりました。
ここまでの整理
- 樊林杏が食いついたのは資金源でも武器でもなく孤児院。しかも席を立って連絡を取ろうとした
- 書類ではなく人に確かめるのは、いまどこにいるかを知りたいときの動き
- ジャミーンの周りには国家機密に関わる人物が並びすぎている
- 善悪を見抜く力は、偽装が主題の物語では最強の道具になる
- ただし狙いをジャミーンと置くのは早い。孤児院育ちとして先に出るのはチンギス
公式で確認する
樊林杏が孤児院に反応するのは第14話の食事の場面です。ジャミーンの描写は第1シーズンに散っています。
放送画面の転載は行っていません。公式ページでご確認ください。
配信情報
ジャミーンが人を見抜く場面
第1シーズンに何度か置かれています。偽装が主題になった第2シーズンのあとで見返すと、意味が変わって受け取れます。第1シーズンからの見返しはU-NEXTが見放題に対応しています。
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参考・出典
- 日曜劇場『VIVANT』公式サイト(登場人物・各話のあらすじ)
- 日曜劇場『VIVANT』第14話および第1シーズンの放送内容
- 孤児院とジャミーンを結ぶ推測、視線の向きについての指摘は、放送後に視聴者のあいだで共有されていた内容を論点として整理したものです。個別の投稿は転載していません