警視庁公安部 / 構造分析
公安部の組織図と和久井俊作
野崎の上に二段ある
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第13話で野崎守が別班拉致事件の首謀者だと判明しました。ここで視線を向けるべきは、野崎が所属していた組織そのものです。警視庁公安部という組織には、野崎より上の階級にいる人物が二人いて、野崎の下には名前だけ与えられた課員が三人います。この配置を上から順に並べると、第13話の構図が変わります。
第17話で、野崎は自分の口で潜入だったと認めました。以下の本文は、野崎を拉致事件の首謀者とみていた第17話より前の考察です。経緯は第17話の考察まとめにまとめました。
図 公安部の序列と、その外側
綿貫賢は「公安部に連なる人物」ではない
綿貫賢は役柄が伏せられている人物だと受け取られがちですが、役職はすでに明かされています。
綿貫賢は警視総監です。演じているのはゲームクリエイターの小島秀夫で、第11話に写真のみのカメオ出演として登場しました。眼鏡と髭のない扮装だったため、放送中に気づいた視聴者は多くなかったと報じられています。
気になるのは配役の話題性ではなく、その写真がどの画面に映っていたかです。
綿貫の顔が出たのは、AIハヤトが情報漏洩に関与しうる人物を割り出す場面でした。黒須駿の居場所、拉致された別班員4人の素性、そして搬送先の病院。この三つをすべて知りうる人間が11人いる、とハヤトは弾き出します。その候補の中に、警視総監が入っていました。
この事実は、11人という数字の性質を変えます。ハヤトは階級で対象を絞らなかった。警察組織の頂点にいる人物まで、機械的に候補へ入れている。
そしてもう一つ、いまとなっては避けて通れない問いが残ります。その11人の中に、野崎守は入っていたのか。
入っていたなら、ハヤトはノコルと新庄に絞り込む過程で真犯人を落としたことになります。入っていなかったなら、そもそも野崎は三つの情報を知りうる立場になかったのに拉致を成立させたことになり、別のルートを持っていたという話になる。どちらに転んでも、第11話のあの画面は読み直しの対象です。
和久井俊作は、もう非公開の人物ではない
VIVANT2の放送が始まった時点で、和久井俊作は公式の登場人物ページに役柄が載っていませんでした。俳優名だけが新キャストとして発表されている状態です。この状況は第12話の放送後に動きました。
第12話の放送後、和久井俊作は警視庁公安部外事第4課の人物として公式の人物相関図に追加されました。演じているのは田中俊介です。
また第11話では、乃木と櫻井司令が面会する場面でAIハヤトの画面に和久井の経歴が表示されており、2022年9月に公安部外事第4課へ異動して現職という記載がありました。
この経歴表示は、さらりと流された割に情報量があります。
2022年9月の異動が正しいなら、和久井は第1シーズンで描かれたテント捜査の期間中、すでに外事第4課にいました。野崎の部下として、新庄と同じ部屋にいた計算です。
ところが第1シーズンに和久井は一度も映りません。同じ課の鈴木祥は繰り返し画面に出ているにもかかわらず、です。制作上の都合と言ってしまえば、それで終わりです。ただしこの作品は、経歴の日付をわざわざ画面に出したときは、あとでその数字を使ってきました。乃木の留学先の記載がそうでした。
第12話で腕組みしていた男
和久井をめぐって最も見返す価値がある場面は、第12話にあります。
キプロスにいる乃木と交信するため、野崎が公安ルームから部下たちを退出させる場面がありました。このとき最後まで腕を組んで不服そうに立ち、乃木との通信画面をにらんでいたのが和久井です。最終的には同僚の鈴木に促されて部屋を出ています。
放送直後、この態度は「怪しい人物」として受け取られました。第13話の予告で裏切り者の存在が示されていたこともあり、和久井を疑う声が出たのは自然な流れです。
ところが第13話で、裏切り者は野崎だと判明しました。同じ場面の意味が、そのまま反転します。
あの場面で起きていたことを、判明後の目で言い直すとこうなります。別班拉致事件の首謀者が、部屋から人を追い出した。不服そうにしていた男は、追い出された側です。
考え方は三つに分かれます。
一つ目は、和久井が野崎の動きを疑っていたという推測。この場合、公安部で最初に野崎に違和感を持った人物が和久井だったことになり、第14話以降に告発者として動く余地が生まれます。
二つ目は、第11話で乃木とFにあっさり尾行を見破られた遺恨という推測。神田明神の鳥居の前で撒かれた相手が、画面の向こうで上司と親しげに話している。この線なら和久井はただの負けん気の強い刑事で、伏線ではありません。
三つ目は、和久井にもまだ裏があるという推測。ただしこれは、第13話で野崎という答えが出た直後に同じ部屋からもう一人出すことになり、構成として詰め込みすぎです。
私は一つ目を推します。理由は次の項目にあります。
端末を貸した男
第13話で野崎の裏切りを決定づけたのは、ベキ脱獄の日にクーダンの飛行訓練所へかけられた一本の電話でした。この電話の論理そのものは別の記事で詳しく扱っています。ここで扱うのは、その電話に使われた端末です。
公安部外事第4課の和久井俊作の携帯から、ノゴーン・ベキの脱獄時刻に発信があったことが第13話で判明しました。かけたのは和久井本人ではありません。櫻井司令の許可を受けたAIハヤトが公安内部のハッキング映像を照合し、そこから野崎に行き着いています。
画面に映っていた通話記録
第13話では、その記録が画面いっぱいに表示されます。「Kudan National Flight Training School Contact Log」と題された、訓練所側に残る連絡の一覧です。
| 項目 | 表示 |
|---|---|
| 日付 | 2023/05/06 |
| 時刻 | 11:35:15(現地時間。日本時間なら12:35) |
| 国 | JAPAN |
| 組織 | Metropolitan Police Department(警視庁) |
| 名前 | WAKUI |
| 番号 | +81-80-891-416 |
並んで表示されるのは、この人物の身元です。和久井俊作/WAKUI SHUNSAKU/警視庁・公安部 外事第四課。制服姿の顔写真つきで照会されています。
記録の時刻は訓練所のある現地の時間です。日本時間とは1時間ずれていて、日本側では12時35分にあたります。この作品は時差を丁寧に扱っていて、乃木も第13話で「キプロス時間5月6日19時」と現地時間で言い直しています。
ここで一つ引っかかります。照会は「警視庁」の名義で行われています。個人が私用でかけた形ではありません。
自分の端末を使わずに部下の端末を借りる。通話記録を自分に残さないためだと考えるのが素直で、記録に残るのは和久井の番号です。後日この通話が問題になったとき、最初に照会を受けるのは和久井であって野崎ではない。
ところが名義が警視庁である以上、組織としての照会という形は残っています。完全に痕跡を消す気なら、官庁名を出さない方法はいくらでもあった。ここでも、隠し方が中途半端です。
同じ画面に並んでいた照会元
もう一つ見落とせないのが、前後の行です。
同じ2023年5月の2週間ほどの間に、海上保安庁、統合幕僚監部、防衛省、公安調査庁、外務省、警察庁、航空自衛隊、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構が、それぞれ別の担当者名で同じ訓練所へ連絡しています。
日本の官庁が2週間で十数件も同じ飛行訓練所に照会している。クーダン国立飛行訓練所は、日本の各機関が日常的に接触する先だったということです。
この並びの中に置かれると、警視庁からの1件は目立ちません。目立たない場所を選んだとも読めますし、たまたま紛れたとも読めます。ただし日付は、新庄がテントのモニターだと判明した当日です。偶然にしては近すぎます。
野崎は和久井を道具として使い、同時に盾として置いたことになります。第12話で不服そうにしていた男は、自分が何に使われたかをまだ知りません。
そして知ったとき、彼は公安部の中で唯一、野崎に対する具体的な物証を手にしている人物です。駒として一番低い位置に置かれた人間が、最後に一番強い札を持つ。この作品が好む配置です。
和久井俊作の位置から残る疑問
- 公安部の序列は警視総監 綿貫 → 公安部長 佐野 → 外事4課 野崎 → 課員という一本の線で引ける
- 綿貫は「公安部に連なる人物」ではない。警視庁の頂点であって別系統
- 和久井は第12話の放送後に公式相関図へ追加された。もう非公開の人物ではない
- 第12話で不服そうにしていた和久井は、裏切り者に人払いされた側だった
- 野崎は和久井の端末で発信した。駒であり、同時に盾でもある
佐野、鈴木、森田、上原、そして東条まで含めた立ち位置は、別記事で見直しました(佐野・鈴木・森田・上原の立ち位置)。
公式の相関図を見る
人物相関図は放送の進行に合わせて更新されています。最新の状態は公式サイトで確認できます。
画像の転載は行っていません。リンク先の公式ページでご確認ください。
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参考・出典
- ORICON NEWS「『VIVANT』第13話、世帯15.1%&世界トレンド1位」2026年8月10日(和久井の携帯からベキ脱獄時刻に発信があった件)
- 日曜劇場『VIVANT』公式サイト 登場人物・人物相関図
- 日曜劇場『VIVANT』第11話・第12話・第13話の放送内容
- デイリースポーツ「VIVANT 要人相関図に新掲載された人物」2026年8月9日(和久井俊作の相関図追加と経歴表示について)
- ORICON NEWS「“ゲーム界の巨匠”小島秀夫氏、『VIVANT』にサプライズ出演」2026年7月26日(綿貫賢の役職について)
- リアルサウンド「『VIVANT』が描く"国を守る"物語の危うさ」2026年8月9日
鈴木のイヤモニなど一部の細部は、放送後にSNS上で共有されていた指摘を論点として整理したものです。個別の投稿は転載していません。