第13話 / 最重要
野崎はなぜ別班を売ったのか
動機は八つ並べ切る
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第13話のラスト、別班拉致事件の首謀者として名前が出たのは野崎守(阿部寛)でした。バルカ共和国で乃木と出会って以来ずっと共に行動し、いつしか兄と弟のような関係を築いてきた相棒です。ネット上では悲鳴に近い反応が並びました。予想できなかった、という声が大半です。
ですが、この作品を追ってきた人間なら分かるはずです。これは3年前から予告されていました。
第17話で、野崎は自分の口で潜入だったと認めました。以下の本文は、野崎を拉致事件の首謀者とみていた第17話より前の考察です。経緯は第17話の考察まとめにまとめました。
この記事は動機を8つ並べて検討してきました。第16話で入口が確定しています。
- 野崎は裏切っていません。公安の任務としてシンシーへ潜入していました
- 目的は核融合技術が中国に独占されるのを防ぐこと。佐野公安部長の了承を得ていました
- 別班の情報は、潜入の信用を買うための代金として使われました。樊林杏(ハン・リンシン)は以前から野崎に別班の情報を買うと持ちかけていました
詳しくは第16話の考察まとめ、全体の流れは第16話までの全体像にまとめています。
並べた8つのうち、当たったのは任務として動いているという線でした。復讐や私怨を主軸に置く説は外れています。
ただし完全に消えたわけではありません。入口は国家の任務で、その上に5年前に部下を救えなかった過去が乗っているという二層の構造は残りました(野崎の動機は劉銘軒(リュウ・ミンシュエン)への弔いなのか)。動機を一つに決めようとしていたのが、この記事の見立ての限界でした。
第13話で判明した野崎の行動
- キプロスでアリを尋問した結果、新庄の居場所が判明した
- 新庄は、ある大富豪の伝手でタイへ逃亡していた
- 乃木とドラムがタイへ向かい、櫻井司令の指示で乃木の部屋を訪れた別班の仲間は長野だった
- 乃木、ドラム、長野が新庄とチョッキーを確保。尋問の結果、この2人は別班拉致事件の犯人ではないと判明した
- そしてラスト、事件の首謀者が野崎守だと明かされた
ジャミーンは3年前から答えを言っていた
第1シーズンで、ジャミーンは人の善悪を直感的に見抜く少女として描かれました。彼女がノゴーン・ベキに懐いたことで、視聴者はベキが本質的な悪人ではないと理解しました。作品はジャミーンの直感を、善悪を見分けるものとして機能させてきました。
そのジャミーンが、野崎にだけは懐かなかった。第1シーズンの視聴者がこの点を疑問として記録し、シネマトゥデイの未回収伏線まとめにも残っていた事実です。
第13話は、この3年越しの疑問に答えを与えました。ジャミーンは間違っていなかった。彼女は最初から野崎の中にあるものを見ていた。
ジャミーンの反応が持つ意味
この回収によって確定したのは、野崎の正体だけではありません。「ジャミーンの直感は作品内で絶対に正しい」というルールが確定しました。
これは今後の考察において、決定的な意味を持ちます。VIVANT2でジャミーンは日本で薫と暮らしています。つまり彼女は、これから登場する人物たちと接触する可能性がある。彼女が誰にどう反応するかを見れば、その人物の善悪が分かる。作品が自ら用意した答え合わせの装置が、まだ生きたまま盤上に残っています。
第14話以降、ジャミーンの表情を映すカットが入ったら、それは尺の都合ではありません。見極めです。
ただしこの推測には穴があります。ジャミーンが見抜くのは善悪であって、敵か味方かではありません。潜入のために手を汚す覚悟を抱えた人間は、目的が正しくても善ではない。ジャミーンの反応は、野崎が敵であることの証明にはなりません。詳しくは野崎はまだ裏切っていない(潜入説)で扱いました。
野崎が動いた理由の8候補
裏切りは確定しました。しかしなぜ裏切ったのかは、まだ説明されていません。作中の描写から考えられるのは、次の説です。
説1 国益のための偽装
野崎は国防を担う立場にあります。別班を潰すこと自体が、より大きな国家的目的のための手段だったという推測です。
別班は自衛隊直轄の非公認組織であり、法的な裏付けを持ちません。公安の人間が、この超法規的な組織を国家のリスクと判断して排除に動く。これは裏切りではなく、立場の違いです。
この説の強さは、動機に悪意が要らない点にあります。野崎が今まで見せてきた乃木への情も、演技である必要がありません。情を持ったまま、職務として潰しにいける。『VIVANT』が繰り返し描いてきた国家と個人の相克という主題に、もっとも素直に接続します。
説2 復讐
放送直後の考察界隈で早くも挙がっているのが、野崎の目的は復讐だという説です。誰への復讐かは分かれますが、テントに関わる過去で何かを失っている可能性が指摘されています。
野崎の来歴は、第1シーズンを通してほとんど明かされていません。主要人物のうち、過去が空白のまま残されていたのは野崎だけでした。これは作品が意図的に空けた枠です。埋めるための材料が、この先に用意されているはずです。
この作品において、公安と復讐はすでに一度結びついています。ノゴーン・ベキこと乃木卓は公安部外事第1課の出身であり、その復讐の標的は元公安部外事課の上原でした。
つまり公安という組織は、身内を切り捨てたことが過去に一度あります。野崎が別班ではなく公安のやり方で動いているなら、そのやり方には前の例があることになります。詳しくは佐野雄太郎の記事で扱いました。
説3 国外の情報機関への協力
野崎が日本の公安とは別の、国外の組織に属している、あるいは協力しているという説です。VIVANT2の舞台がアゼルバイジャン、キプロス、ジョージア、イスラエル、トルクメニスタン、タイと広がっていることから、国際的な組織の関与を想定する推測です。
拉致先として選ばれた5か国の並びは、地理的にも政治的にもばらばらに見えて、ある線でつながります。カスピ海から地中海東岸へ抜けるルート上に集中している。この配置に意味があるなら、野崎の背後にあるのは日本の組織ではありません。
そして第13話のラストで、野崎はエルサレムにいました。この一点から、放送後の考察はイスラエルの情報機関という具体名へ一気に振れています。次の項目で個別に扱います。
説4 脅されている
野崎自身に弱みがあり、動かされているという説です。家族や過去の不正を握られている、という型です。
この説なら、ジャミーンが懐かなかった理由の説明がやや弱くなります。脅されて動いているだけの人間に、ジャミーンがあそこまで反応するでしょうか。彼女が見ていたのは、状況ではなく本質のはずです。
説5 ベキとの密約
野崎はベキと通じており、第1シーズンから二重に動いていたという説です。新庄がベキの逃走を手引きしていたことを考えると、公安内部にもう一人いた可能性は否定できません。
説6 「F」に相当する何かを抱えている
乃木が別人格「F」を持つように、野崎にも本人が制御できない何かがあるという推測です。作品内に根拠はありません。
説7 出自にかかわるもの
この人物の経歴は、公安に入る前がまったく描かれていません。家族も出身地も出てこない。語られないことが多すぎます。
もし出自が日本の外にあるなら、国家への忠誠という前提そのものが変わります。別班を売る動機を、私怨や金銭ではなく帰属の問題として説明できる。この作品は国と個人の関係を主題にしてきたので、主題とも噛み合います。
作中に根拠は一つもありません。空白があるという事実だけが材料です。ただし空白が意図的なものなら、埋められるときに大きな手がかりになるのはここです。
説8 ベキを釣るための餌
裏切りではなく捜査だったという筋です。ノゴーン・ベキが生きていると考え、匿っている側を炙り出すために別班の情報を流した。
釣るには餌が要ります。テントの残党やその先にいる組織が最も欲しがるのは別班の内部情報で、それを流せば必ず誰かが取りに来る。取りに来た相手を辿れば、ベキに届きます。
この推測だと、野崎は公安を裏切っていません。逃したベキの逮捕という、公安の目的に沿って動いていることになります。島根で家紋を確かめ、乃木の伯父・乃木寛道(井上順)に会いに行った第1シーズンの動きとも一本につながります(潜入説の根拠9)。
野崎の動機を絞る手がかり
- ジャミーンが野崎に懐かなかったという3年前の伏線が回収された
- 回収によって「ジャミーンの直感は正しい」というルールが確定した。ただし彼女が見るのは善悪であって敵味方ではない
- 動機として成立しうるのは8説。いちばん強いのは国益のための偽装で、その中身として私が採るのはベキを釣るための餌
- 裏切りは確定したが、なぜは一言も語られていない
エルサレムでの接触、3年前に出演者が名指ししていた件、そして裏切りと噛み合わない描写は裏切りと噛み合わない描写で扱いました。
野崎守の人物ページを見る
人物紹介と場面写真は、公式サイトの登場人物ページに掲載されています。
画像の転載は行っていません。リンク先の公式ページでご確認ください。
配信情報
ジャミーンが野崎に見せた反応
第1シーズンでジャミーンが野崎に見せた反応は、今こそ見返す価値があります。第1シーズン全10話とVIVANT2は、いずれもU-NEXTで見放題配信されています。最新話はTVerでも見逃し配信されています。
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参考・出典
- 日曜劇場『VIVANT』第13話(2026年8月9日放送)
- オリコン「『VIVANT』"裏切り者"判明にネット悲鳴」2026年8月9日
- シネマトゥデイ「【ネタバレ】『VIVANT』"最大の裏切り者"が判明」2026年8月9日
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- 日曜劇場『VIVANT』公式サイト 登場人物