第13話 ラスト / 場面解説
13話ラストの解説
二本の時計、時のズレ
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放送後、最も多く投げられた疑問はこれでした。野崎はなぜ飛行訓練所に電話したのか。そして、なぜその電話で裏切りが確定するのか。
「わからないのは自分だけ?」という投稿に大量の共感が集まっていました。理解力の問題ではありません。作品がこの一点の説明を意図的に省いているからです。順を追えば分かります。
この記事は電話の一点に絞って解説します。第13話が回収した伏線は第13話で回収された伏線7つ、新しく置いた伏線は第13話で残った伏線15項目にまとめました。
第14話から第19話までに、野崎の潜入(第15〜17話)、生きていた劉銘軒(第16話)、新庄の生存(第18話)、和田の死とプリシャの名(第19話)まで話が進みました。いまの状況はわかりやすいVIVANT解説、残っている謎はまだ答えが出ていない謎にまとめています。
鍵は「二本の時計」
この回が分かりにくいのは、同じ情報を、二人が別々のタイミングで手にしているからです。乃木の時計と、野崎の時計が並走しています。
クーダンへの電話前後の時系列
| いつ | 何が起きたか | この時点で知っている人 |
|---|---|---|
| ベキ脱獄の日 | 野崎が和久井の携帯を使ってクーダンの飛行訓練所へ電話し、新庄が操縦免許を取得しているか確認する(第13話で太田が通話履歴から突き止める) | 野崎 |
| 第11話 | 別班員5人が消える。空港周辺の監視映像が遮断される。新庄がウラジオストクにいるとする誘導が始まる | 野崎 |
| 第12話 | 太田の再調査でロシア方面は罠と判明。キプロスでアリが「新庄は操縦免許を持つ」と証言し、乃木が野崎へ伝える | 野崎、乃木 |
| 第12話 | 報告を受けた野崎は、初めて知ったかのような反応を見せる | — |
| 第13話 | 新庄とチョッキーを確保。尋問の結果、拉致事件については無関係と判明 | — |
| 第13話 ラスト | 首謀者は野崎守だと明かされる | — |
1行目と3行目を見比べてください。野崎はベキ脱獄の日に知っていて、乃木は第12話で知りました。そのあいだに何日もの開きがあります。
そして4行目です。すでに知っていた野崎が、乃木の報告に初めて知った反応を返した。ここが裏切りの証拠になります。
なぜ「東条」ではなく「野崎」なのか
混乱しやすいのが、東条と野崎のどちらが先に知っていたのかという点です。
順序は野崎が先と考えるのが自然です。理由は情報の性質にあります。
新庄がクーダンの訓練所に通っていたという事実は、公安の内部でしか掴めません。東条はサイバー犯罪対策課の技術者であって、同僚の私的な受講歴を追う立場にない。一方の野崎は、新庄の直属の上司でした。
つまり流れはこうなります。野崎が新庄の受講歴を知っている → 逃走手段はジェットだと見当をつける → 訓練所へ電話して免許取得を確認する → 東条に指示して偽の映像を作らせる。東条は指示を受けた側で、起点ではありません。
東条を主犯と見る推測もありますが、私が東条の記事で「共犯より道具」と考えているのは、この順序が理由です。
野崎がクーダンに電話した理由
先に結論を書きます。電話をかけたことが問題なのではなく、電話をかけた事実が「野崎は嘘をついた」ことの証明になっているのが問題です。
成立の手順はこうです。
- 新庄は大富豪の伝手でタイへ逃亡していた
- 乃木はキプロスでアリを尋問し、新庄の居場所につながる情報を得た
- 乃木とドラムがタイへ向かい、新庄とチョッキーを確保した
- 新庄の国外逃亡の手段はプライベートジェットだった
- その可能性を裏づけるには、新庄が操縦免許を持っているかを確認する必要がある。確認できる先が、訓練を受けていたクーダンの飛行訓練所
- 乃木はアリから「新庄が操縦免許を所持している」と聞き、すぐ野崎に伝えた
- そのとき野崎は、初めて知ったような反応を見せた
- しかし野崎は、それ以前に自分で訓練所へ電話して確認していた
5が事実なら、4は演技です。野崎は知っていた情報を知らないふりをし、乃木に伏せた。これは能力の問題でも判断ミスでもなく、意図的な隠蔽です。だから決定打です。
もう一つの見方 新庄に目を向けさせるため
順番を逆にする解釈も出ています。野崎はすでに新庄がテントのモニターだと知っており、新庄がベキの逃亡を手助けした以上、国外へ脱出するはずだと踏んでいた。そこで免許の有無を確認し、別班の目を新庄へ向けさせるために使ったという推測です。
この場合、電話は捜査ではなく誘導です。実際、別班は総力を挙げて新庄を追跡し、確保しました。そして尋問の結果、新庄は拉致事件については白でした。別班は無関係の相手を追いかけて時間を使ったことになります。
しかも野崎は、誰にも頼まれずにこの確認をしています。新庄が飛行訓練に通っていたことを知っていたのは野崎自身であり、そこから免許の可能性に自力で辿り着いています。捜査能力としては優秀です。その優秀さを、乃木に隠すために使った。
映像工作は二つに分かれる
もう一つ、混乱の元があります。空港の映像をめぐる話は二つ並走しています。片方は真相が出て、もう片方は未解決のまま残っています。
- 新富士空港(タイ行き)=防犯カメラの映像差し替え。新庄の逃亡を隠す工作で、線状降水帯のニュースから崩れた
- 茨城空港(ウラジオストク行き)=映像へのノイズ混入。捜索先をロシア方面へ逸らす工作で、指示者は確定していない
茨城空港のサーバーへのアクセス記録には、東条のPCから接続され映像が偽装された記録が残っていたとされます。しかもその時刻は、乃木がアリと会うより前。空港の防犯カメラが怪しいという話題が、まだ誰の口にも上っていない時間帯です。
ここで論理が閉じます。偽の居場所を用意できるのは、本当の居場所を知っている者だけです。野崎が新庄はバンコクにいると確信していたからこそ、別方向へのミスリードを作れた。そしてその確信の根拠が、免許の確認でした。
二つの工作の目的の違いと、東条が主犯になれない理由は映像工作は二つあったで分けて扱っています。
電話、隠蔽、偽情報。この3つが一本の線で繋がります。
もう一つの証拠 搭乗記録とパスポート
AIハヤトに搭乗記録を確認させた場面についても、指摘が出ています。前の回で野崎は「タイで合流する」と言っていたのに、タイへの渡航記録がなかった。つまり行くと言って行かなかったことが記録で確定したことになります。
さらに、野崎が手にしていたパスポートが赤色の一般旅券だったという指摘もあります。公用旅券ではなく一般旅券を使うということは、公務としてではなく一個人として動く意思です。
電話、偽画像、行かなかった記録、そして一般旅券。野崎は複数の場面で、公安の人間としてではなく個人として動いています。
東条は野崎の共犯か、道具か
第13話には、見返すと意味の変わる短いやり取りがあったと指摘されています。乃木が「東条さんを退席させてください」と求めたのに対し、野崎がそれを認めなかったという場面です。
乃木は東条を疑っていた。しかし野崎を信じていたため、野崎がそう言うなら、と引き下がった。
この場面が事実なら、二重の意味があります。乃木の疑いは正しかった。そして野崎は、乃木の正しい疑いを潰した。
乃木が野崎を信じていたことの証明でもあり、その信頼が利用されたことの証明でもあります。東条をめぐる伏線については東条翔太は最初から向こう側だったのかで詳しく扱いました。
野崎は電話のあと何をしていたのか
ここからが本題です。野崎が新庄の逃走手段を早い段階で把握していたなら、その時点で新庄を捕らえることもできたはずです。しなかった。
放送後の議論で、野崎の一連の行動をこう整理する見方が出ています。
- 知らないふりをして時間を稼ぎ、別班が新庄を探している間に別のことを進めた
- 新庄とチョッキーは事情を知らないため、「やりすぎるな」と牽制した
- 別班側にはドラムとチンギスを付けた
- 東条をあえて乃木との通話に参加させた。後で東条が話しやすいように
この整理が正しいなら、野崎の行動には一貫した性質があります。誰も死なせない方向に調整されている。
新庄とチョッキーは確保されただけで殺されていません。別班側には戦力が付いています。東条は罪を軽くできる立場に置かれています。そして最後に自分だけが罪を被る形になっている。
敵に回った人間の動きとしては、あまりに配慮が行き届いています。詳しくは潜入説の記事で扱いました。
和久井のスマホという細部
この電話に使われたのは、部下である和久井俊作の携帯でした。訓練所側の記録には2023/05/06 11:35:15/警視庁/WAKUIと残っています。時刻は現地時間で、日本時間なら12時35分です。
自分の端末を使わなかったということは、通話記録を自分に残したくなかったことになります。痕跡が雑すぎるという指摘とは逆で、この一点については隠す意思がはっきり出ています。犯人に求められる条件を容疑者ごとに並べた表は映像工作は二つあったにあります。
そして同時に、和久井という人物が野崎の行動範囲に入ってきます。第12話の放送後に公式相関図へ追加された、公安部外事第4課の捜査官です。記録に残る発信元が部下の番号になるという意味も含めて、公安部の組織図と和久井俊作で扱いました。
終盤で野崎が動いた順番
第13話は、新庄とチョッキーが拉致事件の犯人ではないと確定させてから、野崎の名前を出しました。この順番は意図的です。
視聴者の容疑者リストを一つずつ潰し、「じゃあ誰だ」と考える瞬間を作ってから、最も疑っていなかった人物を置く。しかも野崎は、視聴者が3年かけて信頼を積み上げた相手です。時間そのものを仕掛けに使っています。
新庄への尋問は、第1シーズンで山本やアリに行われた拷問に通じるものでした。別人格の「F」に成り代わった乃木の追及は容赦なく、新庄は知っていることを吐きました。
冷酷な乃木を見せた直後に、傷つく乃木を見せる。感情の落差もまた設計です。
VIVANT2のポスターに置かれた英文も、第1シーズンで乃木が野崎に言った台詞の英訳と読めます(ポスターの英文は3年前の台詞だった)。
第14話に残った疑問
番組最後の映像では、宮下今日子が演じる新たなキャラクターの姿が一瞬だけ映されました。野崎の「奴は手段を選ばない」というセリフとともに登場しています。
裏切り者と判明した直後の回で、野崎が誰かを「手段を選ばない」と評する。野崎の上に、もう一人いる。クーダンへの電話が示したのは黒幕の正体ではなく、黒幕に追われている人間の必死さだったのかもしれません。
「拉致犯だとはまだ繋がらない」という指摘
放送後に多かったもう一つの声がこれです。電話と偽装で示されたのは隠したことまでであって、別班員5人を拉致した犯人だという証明にはなっていないのではないか。
第13話の劇中で直接示されたのは、野崎が新庄の逃亡手段を事前に知りながら伏せていたことと、捜索先を逸らす工作に関与したことです。拉致の実行が画面で描かれたわけではありません。
それでも首謀者と扱ってよい理由が二つあります。
一つは順序です。工作の時刻を並べると、ノイズが仕掛けられたのは別班員が拉致されるより前でした。事件が起きる前に捜索先の準備ができている。これは事後の隠蔽では説明できません。
もう一つは番組表です。第14話の公式の内容欄には「5人の別班を売った野崎」と書かれています(編成表から読む第14話)。制作側が確定として扱っている以上、劇中の描写がそこまで届いていないという違和感は、次回以降に埋められる前提だと読むのが自然です。
第13話の公式ページを見る
電話の場面を含む第13話のあらすじと場面写真は、公式の各話ページで確認できます。
画像の転載は行っていません。リンク先でご確認ください。
配信情報
クーダンへの電話シーン
ここで扱った細部は数秒のカットです。VIVANT2は放送終了後にU-NEXTで配信され、第1シーズン全10話も見放題の対象です。
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