東条翔太 / サイバー犯罪対策課
東条は最初から裏切っていたのか
七つの兆し順に置く
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第13話で「最大の裏切り者」は野崎守だと確定しました。しかし東条をめぐる違和感は、何一つ解消していません。むしろ増えています。
第17話で、野崎は自分の口で潜入だったと認めました。以下の本文は、野崎を拉致事件の首謀者とみていた第17話より前の考察です。経緯は第17話の考察まとめにまとめました。
第18話から、東条は太田と組んでゴルバドとの国境付近でハッキングを受け持っています。第20話の予告には東条の「やばいです!」という声が入りました(第20話のみどころ)。
東条は黒幕ではありませんでした。第14話で、野崎の使い走りにすぎない立場だったことが示されています。
野崎の行方不明と新庄の死を知った東条は、乃木に殺されるかもしれないと口にしてすぐ動き出します。宅配トラックの荷台に乗り込み、監視カメラを避けながら山陰方面へ。行き着いた先は島根県の奥出雲でした。中国・北朝鮮・ロシアへ渡る経路を探していた形です。
そして北朝鮮からの連絡に応じようとした東条の背後に、乃木が笑みを浮かべて立っているところで回が閉じました。
逃げ込んだ土地が引っかかります。奥出雲は、第1シーズンで乃木家の家紋とテントのマークが酷似すると指摘された土地そのものです(「櫻井」という姓と奥出雲はつながっている?)。乃木卓の故郷にあたります。
国外へ抜けたいだけなら、港はいくらでもあります。よりによって乃木家ゆかりの土地へ逃げ込むのは、偶然にしては出来すぎています。放送後には、乃木をおびき寄せるために東条が選んだ土地ではないか、という指摘も出ています。逃げているのではなく、待っている形です。
そして東条は、野崎の側にいながら中身を何も知らされていませんでした。裏切りに加担していたのではなく、加担させられていたことにも気づいていない。逃走の手口も、監視カメラを避けて陸路で山陰まで走るという素朴なもので、野崎や新庄の動きとは比べものになりません。
殺されずに生かされている点は残ります。使えるほうを生かすのがこの組織の作法なら、東条にはまだ役目が残っています。北朝鮮へ情報を売る動きを乃木が泳がせているのなら、東条は売り先をあぶり出すための餌です。
東条が逃げ込んだ奥出雲は乃木卓の故郷です。乃木の身近な人が押さえられる筋は別に扱いました(薫とジャミーンは人質になるのか)。
東条の位置づけが根本から変わりました。過去の犯罪歴を野崎に握られ、脅されて動かされていた人物です。
- やらされていたのは、新庄の逃亡先をめぐる細工。ウラジオストクへの誘導と、防犯カメラの映像を加工したように見せること
- 野崎は東条の部屋にカメラを4つ仕掛けていた
- 野崎の50億のうち1億2600万円が東条へ振り込まれている
- 東条が佐野を自宅へおびき寄せ、別班が拘束した
- 東条はいま別班の仕事に加わっている
この記事で「売り先をあぶり出すための餌」と書いた点は半分です。餌ではなく、握られて使われていました。
そしてタイガーマスクの意味も明かされました。伊達直人の名で孤児院へ寄付を続ける、あの運動のほうです。ベキと同じことをしていた人物でした(第15話の考察まとめ)。
東条について確認できること
- 東条翔太(濱田岳)は警視庁サイバー犯罪対策課の刑事で、天才的技術を持つホワイトハッカー
- 第12話で野崎は、東条が同席する場において太田の正体が割れないよう、カムフラージュ用の声と映像を使うよう指示した
野崎が仲間を守るために取った措置に見えていました。ところが野崎が首謀者だと判明した今、この指示の意味は反転します。詳しくはブルーウォーカーの記事で扱いました。
東条を疑わせた7つの描写
- ノゴーン・ベキを「ベキ様」と呼んだ場面が2度あった
- ブルーウォーカーの顔を見ることができなかった
- 自宅のコレクションがウルトラマンからタイガーマスクに変わっていた
- ドラムからの仕事の電話を、寝ていて無視した
- チョッキーが激昂して電話をかけた相手が東条だった
- 終始おどおどしており、新庄に近づく乃木たちを見て怯えていた
- 放送の4か月前に公開された公式動画の黒板に、日直として新庄と東条の名が並んでいた
8つ目 そして最大の手がかり「ベキの脱出」
第12話で東条が、ベキについて「脱出」という言葉を使ったという指摘があります。
7つの伏線のどれよりも、これは決定的です。死んだ人物について「脱出」とは言わないからです。
第1シーズンの終盤でベキは乃木に撃たれています。それを前提にするなら、東条の口から出るべき言葉は「死亡」であって「脱出」ではない。東条は、公表されていない情報を握っていることになります。
そして同じ回で、新庄も「ベキを脱出させるタイミング」という趣旨の言い方をしたとされます。二人が同じ前提に立っているなら、言い間違いでは説明できません。詳しくはベキ生存説の記事で扱いました。
7つの描写を同列には扱えない
7つを一列に並べると強く見えますが、根拠としての重要性はそれぞれ違います。
強い 1と5
「ベキ様」呼びは決定的です。公安の刑事が国際テロ組織の指導者を敬称で呼ぶ理由がありません。しかも2度。言い間違いでは説明できない回数です。
チョッキーが激昂して電話した相手が東条だったという点も無視できません。チョッキーは元テントのモニターで、タイで新庄を匿っていた人物です。その人物と東条に直接の連絡経路があるなら、東条は日本側の窓口です。
中 3と7
タイガーマスクへの美術変更は、意味が確定していません。素性を隠して寄付を続ける主人公像がテントの理念と重なる、という見方が主流ですが、私は別の考察も示しました。東条は敵ではなく、テントの理念を理解する者として配置されているのではないか、という線です。
公式動画の黒板は面白い指摘ですが、放送4か月前の映像に細部を仕込むかは判断が分かれます。ただし『VIVANT』は公式SNSの画像で実際の舞台を先出ししてきた作品です。前例がある以上、切り捨てられません。
弱い 2・4・6
顔を見なかった、電話を無視した、怯えていた。これらは後から意味を読み込める種類の描写です。東条が味方であっても同じ演技はあり得ます。心証としては積み上がりますが、証拠にはなりません。
第13話が加えた一点
第13話で、乃木が「東条さんを退席させてください」と求めた場面があったと指摘されています。そして野崎がそれを認めなかった。乃木は野崎を信じていたため、引き下がった。
これが事実なら、7つの伏線以上に決定的です。作中で最も疑り深い人間が、東条を名指しで排除しようとしていたことになるからです。
そして野崎がそれを止めた。理由は2つしかありません。東条が野崎の共犯だったか、あるいは野崎が東条を使い続ける必要があったか。
東条は「見せてもらえなかった側」だった
第13話のあと、この人物の位置がもう一段変わります。裏切り者と同じ部屋にいた人間として見るのではなく、裏切り者が何を隠したかの受け手として見ると、意味が反転します。
サイバー犯罪対策課の東条が同席する場で、野崎は太田の正体が割れないよう、カムフラージュ用の声と映像を使うよう指示しました。
放送時点では仲間を守る配慮に見えました。しかし野崎が首謀者だったのなら、この指示は守るためではなく隠すためだったことになります。そして隠した相手は、その場にいた東条です。
東条は警視庁で最も高い技術を持つホワイトハッカーとして描かれています。太田の正体を独力で見抜ける可能性があるのは、公安周辺ではこの人物だけです。
その東条にだけ、情報を届かせない。これは裏切り者が最も警戒していた相手が東条だったということです。裏切り者候補として疑われていた人物が、実際には裏切り者から遮断されていた。
そもそも東条は公安ではない
見落とされがちな一点があります。東条の所属は生活安全部サイバー犯罪対策課です。公安部ではありません。
公安部の序列を縦に並べると、警視総監から公安部長、外事第4課、課員という一本の系統が引けます。東条はその系統の外にいます。
つまり野崎の指揮下にない。第12話の顔と声の入れ替えは、命令で黙らせられない相手に対して、命令以外の手を使っています。組織図の外にいる人物だけが、野崎がコントロールできなかった対象でした。
この構造は、東条を裏切り者から遠ざけると同時に、物語上の重要度を上げます。公安の内部が汚染されているとき、外にいる技術者だけが自由に動けます。
記録は残った。それでも売れない
茨城空港のサーバーへのアクセス記録を調べたところ、東条のPCから接続され、映像が偽装された記録が残っていたとされます。時刻は乃木がアリと会うより前で、空港の防犯カメラが怪しいという話題がまだ出ていない段階でした。
関与そのものは動きません。問題はここから先です。
東条は別班員の入院先を知りません。搬送先を知っていたのは、第11話でAIハヤトが割り出した11人だけ。知らない情報は売れません。
指示した側は、映像を触る技術と、入院先の情報の両方を持っている必要があります。東条が持っているのは前者だけです。この非対称がある限り、東条は主犯になれません。
手は動かせるが、材料は持っていない。これが道具という結論の中身です。二つの空港をめぐる工作の整理は別記事にまとめました。
別班は個人的な繋がりを疑わない
東条が茨城空港に細工をした動機について、私は一つ見落としていた筋があります。個人的な繋がりです。
東条は別班員の移送先を知りません。組織の情報を売れる立場にない人物が、捜索先を逸らす工作をする理由は限られます。指示を受けたか、あるいは新庄個人を助けたかったかのどちらかです。
面白いのは、別班側がこの可能性をほとんど検討していないように見えることです。
この組織は人の情に疎い。長野もそう語っています。チョッキーが新庄を逃がした理由が私的な感情だったと分かるまでに、別班は何段も遠回りをしました。友情や好意で人が動くという線が、最初から検討の外に置かれている。
訓練された人間ほど、動機を利害と組織で考えます。東条を疑うときも「誰の駒か」から入り、「誰の友人か」からは入らない。ここが別班の盲点です。そして盲点は、突く側から見れば入口になります。
ただし私は、東条の動機を個人的な繋がりだとは見ません。理由は時刻です。ノイズが仕掛けられたのは別班員が拉致されるより前でした。友人を逃がすためなら、逃げたあとに痕跡を消せば足ります。事件が起きる前に捜索先を用意する動きは、個人の判断では説明できません。
別班は東条の腕を計算に入れていなかった
第13話で乃木が驚いた理由は、裏切りだけではありません。東条にそこまでの腕があると思っていなかったからです。
別班はブルーウォーカーに対抗できる人材として、東条を候補に挙げませんでした。引き抜かずに契約を選んだのは、太田のほうが優秀だと判断したからです。
ところが茨城空港の工作は、その東条の手によるものでした。能力を低く見積もられていた人物が、実際には別班の捜査を遅らせるだけの仕事をしていた。
これは工作の指示者を絞るときの手がかりです。指示した側は、東条の腕を正しく評価していたことになる。別班が見誤った能力を、正確に測っていた人物がいます。公安の内側から東条を見ていた人物なら、それができます。
能力を隠していた演出そのものを、推理ものとして不公平だと見る向きもあります。ただし私は、隠されていたのは能力ではなく評価のほうだと考えています。東条は最初から同じ腕を持っていて、別班がそれを見ていなかっただけです。
共犯か、道具か
共犯説
東条と野崎が同じ側におり、役割分担していたという説です。東条が技術を担当し、野崎が現場を動かす。ウラジオストクの偽画像も、この分担で説明が付きます。
道具説
東条は事情を知らされないまま使われていたという説です。私はこちらをやや推します。
理由は、野崎が東条をあえて乃木との通話に参加させていたという指摘があるからです。共犯者を、追及する側の目の前に置く理由はありません。逆に、後で東条が話しやすくするための配置だと考えると筋が通ります。
怯えていたという描写も、この推測なら整合します。何をさせられているか分からないまま巻き込まれた人間の表情です。
東条は裏切り者なのか
東条が何かに関与しているのは、ほぼ確実です。「ベキ様」呼びとチョッキーとの接点は、単独では説明が付きません。
ただし能動的な裏切り者かどうかは別問題です。第13話で乃木の疑いを潰したのは東条ではなく野崎でした。東条はその場にいただけです。
検証できる形にすると、こうなります。東条が自分の意思で動く場面が今後あるか。あれば共犯、なければ道具。第14話以降の東条の描かれ方を見れば分かります。
東条の立場を見極めるポイント
番組表の内容欄によれば、第14話では今作最大の宿敵となる組織の名前が明かされます(第14話、番組表に先に出ていた情報)。敵が具体化するということは、共犯説の「相手」も具体化するということです。
東条が向こう側だとすれば、繋がる先はテントではなく、その新しい組織になります。サイバー領域を扱う人物が国外の情報機関と接点を持つ形は、この作品の広がり方と噛み合います。
ただし私の結論は変わりません。共犯より道具です。第12話で野崎に情報を遮断されていた人物が、同じ野崎の共犯であるという説明は立てにくい。
そして部屋の美術変更は、いまだに説明が付いていません。この作品が意味のない変更を入れないなら、飾りには別の役割があるはずです。第13話が残した伏線の一つとして、残った15項目にも入れてあります。
映像を見る
放送前の公式動画「VIVANT NEXT TO YOU」に映る黒板は、公式アカウントで公開されています。
画像の転載は行っていません。リンク先の公式ページでご確認ください。
配信情報
「ベキ様」と呼ぶ場面
7つのうち検証しやすいのが「ベキ様」呼びです。VIVANT2と第1シーズン全10話はU-NEXTで見放題配信されています。
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参考・出典
- 日曜劇場『VIVANT』公式サイト 登場人物
- 第1シーズンおよび第11話・第12話・第13話の放送内容
- 7つの伏線と第13話の場面は視聴者の指摘を論点として整理したもので、映像は再確認していない(本文に未検証と明記)