第11話〜 / 設定の考察
コラボCMが明かしたのは別班の階級だった
組織図の上、空いた段
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ビールのタイアップCMが本編級の設定を出してくる、という珍しい事態が起きています。話題になっているのはAIハヤトの名前の由来ですが、この作品の今後を左右するのは別のひとことです。
第19話で、櫻井が乃木に「Fの意見を聞きたい」と言いました。AIハヤトがFの精神構造をもとに作られたというCMの説明と合わせると、櫻井はかなり前からFを知っていたと考えられます(櫻井はなぜFを知っているのか)。司令より上の椅子に誰が座っているのかは、まだ明かされていません。
第11話の絞り込みが実際に外れたことを受けて、分析そのものを検証した記事を立てました(AIハヤトの分析は信用できるのか)。
このCMはどこまで公式設定なのか
- サントリー「パーフェクトサントリービール」と『VIVANT』のスペシャルコラボCM。VIVANT2の第1話(第11話)の放送直後に60秒版が地上波でオンエアされた
- 約7分のノーカット版が公開され、8月4日からTBS公式YouTubeでも見られる状態になった
- 脚本・撮影・編集・仕上げを本編のドラマスタッフが担当した完全撮り下ろし。演出担当のTBS宮崎陽平が、設定はあるが本編で描くと説明になるため省いていた内容だと説明している
- 時間軸は第1シーズン最終話、ベキが日本の警察へ出頭した後。つまり前作と今作のあいだの物語にあたる
- 登場するのは乃木憂助、その別人格F、そしてAIハヤト(声・高山みなみ)
広告の枠を使って前日譚を出す。ここまでは宣伝としてよくある形です。問題は、そこに何が書かれていたかです。
CMの台詞で判明した4点
- AIハヤトは、乃木の別人格Fの精神構造をベースに構築された。ハヤト自身が「僕と憂助は一心同体」と言い、名前は乃木がかつて名乗っていた「隼人」から取られたと語る
- AIハヤトはテント潜入作戦に参加していない。作戦は乃木と司令だけが把握する極秘任務だった
- 外された理由は情報漏れの防止。司令以上の上層部がアクセス権限を行使して開示を命じれば、機械であるハヤトは拒否できない。だから最初から知らせなかった
- Fはそれを「機械の忠誠心なんてのはプログラムされた階級に依存するだけの安いもんだ」と切り捨てる
SNSで拡散したのは1番目でした。Fが由来だという設定が公式から出たのですから、驚きとしては最大です。「ハヤト」が三度出てくる件を扱った記事で私が立てた推測も、ここで答え合わせが済みました。
ただし、物語をこれから動かすのは3番目です。
司令の上に誰かがいると作品が認めた
この一文は、AIの仕様の説明として書かれています。しかし成立するためには前提が要ります。櫻井里美より上のアクセス権限を持つ人物が実在することです。
存在しない相手を警戒して極秘任務を組む理由はありません。乃木と櫻井は、上から命令が降りてくる可能性を具体的に想定して、AIを外すという判断をしました。組織図の上に、二人が信用していない階層があるということです。
これまで別班の指揮系統は、司令の櫻井を頂点として描かれてきました。乃木は櫻井に報告し、櫻井が承認する。上がどうなっているかは一度も画面に出ていません。
その空白が、空白のまま置かれているのではなく「乃木たちが警戒する対象」として存在していると、制作側が明文化したことになります。
宙に浮いていた三つの謎が一本に繋がる
櫻井の上に階層があると仮定すると、これまで別々に扱われてきた疑問が同じ場所を指しはじめます。
その1 エルサレムで会っている相手
野崎守は第13話でイスラエルへ向かいました。5か国に散らばった別班員を押さえ、日本国内の捜査を逸らし、公安の内側で動く。この規模を一人で回せる人物とは考えにくく、私は宮下今日子の新キャラを「野崎の上位者」と読んでいます。その上位者が別班の側にもアクセスできるなら、CMの設定と同じ椅子に座る人物です。
その2 和久井の携帯と東条のPC
野崎はクーダンへの連絡に部下の携帯を使い、茨城空港の映像工作には東条のパソコンから接続した記録が残りました。他人の権限を借りて動く、という手口が繰り返されています。権限を借りる人間は、自分の権限では届かない場所を知っている人間です。
その3 AIハヤトの公安突破が速すぎる
第11話でハヤトは、黒須の居場所と搬送先を知る11人を短時間で割り出しました。公安の内部情報にそこまで踏み込める理由は説明されていません。野崎潜入説の記事で扱ったバックドア説の根拠がこれです。上位権限が実在するなら、穴を開けるのに不正アクセスは要りません。正規の手続きで足ります。
AIハヤトの危うさは「暴走」ではない
放送後、ハヤトが暴走するのではないかという見立てが広がりました。人間くさく振る舞い、拗ね、Fに反論する。感情を持ったAIが制御を離れる、という定番の展開です。
ただしCMが用意した危うさは、その形をしていません。
ハヤトが自分で語っているのは「上位の権限には逆らえない」という一点です。感情の暴走ではなく、階級への服従。危険なのはハヤトの意思ではなく、ハヤトに命令できる立場のほうです。
この作品で最も強力な情報処理装置が、構造上いちばん乗っ取りやすい。乃木が本編で最も頼っている道具が、同時にいちばんの弱点として設計されています。
あわせて、ハヤトは外国の衛星へのハッキングを禁じられていると説明されています。だから乃木は太田梨歩に頼る。ブルーウォーカーの記事で扱った「なぜ最強のAIがあるのに人間のハッカーが要るのか」という素朴な疑問も、ここで理屈が通りました。
第11話の分析結果は信用してよいのか
ハヤトが上から操作されうるなら、ハヤトが出した答えも操作されうる、という筋が立ちます。第11話で新庄浩太郎が特定され、11人が絞られた。あの結論は入力次第で作れるのではないか、という疑いです。
ただし第13話までの展開を見ると、ハヤトの分析はおおむね当たっています。新庄は実際に逃亡し、11人の中から野崎が出た。操作された形跡は今のところ画面にありません。私はこの推測を憶測に留めます。
それでも押さえておく価値はあります。第14話以降でハヤトの答えが外れる場面が来たら、疑うべきは性能ではなく権限です。
ここで一つ、線を引いておきます。ハヤト自身が裏切るという筋は採りません。人格の設計元はFで、乃木と一心同体だと自ら述べています。裏切るには意思が要りますが、この機械に与えられているのは階級への従順さだけです。
ただし従順であることは安全を意味しません。上位者が意図を持てば、数字も分析もその意図に沿った形で出てきます。疑うべきは機械ではなく、機械の上にいる人間のほうです。第13話で公安の防御を突破した速さが不自然だという指摘も、同じ枠で説明が付きます(潜入説の根拠)。突破できたのではなく、通してもらえたのかもしれない。
別班に「頂点」はあるのか
上に誰かがいると分かったところで、もう一段考えます。その上は個人なのか。
別班員は世界中にいます。丸菱商事の専務が別班員だったように、表の職業を持ったまま各地に散っている。この形は、指揮官が一人いて命令を下ろす組織とは相性が悪い。連絡が途絶えれば動けなくなるからです。
散らばったまま機能させる方法は一つしかありません。命令ではなく、共有された前提で動かすことです。国防のために顔と名前を捨てるという一点だけを共有していれば、指示がなくても各自が同じ方向を向きます。
この形なら、櫻井の上にあるのは人ではなく取り決めや制度のほうかもしれません。司令ですらアクセスを拒めない仕組みが先にあって、それを動かせる立場の人間が入れ替わり立ち替わり座っている。
ただしCMの説明は「上層部がアクセスを命じれば」という言い方でした。命じる主体が想定されています。制度だけなら、命じるという語は出てきません。
両方あると考えています。思想で散らばった組織を、制度で束ね、その制度を動かせる椅子に誰かが座っている。第14話以降で明かされるのは、その椅子に誰がいるかです。
タイアップCMを材料にしてよいのか
ここは慎重に線を引いておきます。
本編ではないから無視すべきだ、という立場はあり得ます。ただしこの映像は、本編スタッフが脚本から仕上げまで担当し、制作側が「設定としてはあるが本編で描くと説明になるので省いた」と説明したうえで公開されたものです。設定の出所としては本編の外側にありながら、制作の内側から出ている。
私の扱いは次のとおりです。CMで語られた内容は設定として採用しますが、本編で描かれた事実とは分けて記します。上層部の存在も、いまのところ「乃木と櫻井が警戒した相手」であって、画面に出た人物ではありません。
CMが補った別班の設定
コラボCMの見出しはAIハヤトの由来でしたが、本編を動かすのは階級のほうです。
櫻井里美は頂点ではない。その上には、司令の承認を飛び越えて情報を引き出せる権限がある。そして乃木と櫻井は、第1シーズンの時点でその権限を警戒していました。テント潜入作戦を二人だけの秘密にしたのは、味方を疑っていたからです。
VIVANT2で別班員5人が奪われ、司令の指示系統が揺らぎ、野崎がイスラエルへ向かった。この流れを、櫻井より上の階層という補助線で引き直すと、宿敵はテントの残党ではなく組織の内側から来るという形が見えてきます。第14話の番組表が予告する「今作最大の宿敵となる組織」が、日本の外にあるとは限りません。
映像を見る
7分のノーカット版はTBS公式YouTubeで公開されています。本文で扱った台詞はすべてこの映像に含まれます。
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配信情報
第1シーズン最終話の該当場面
CMの時間軸はベキの出頭直後です。第1シーズン第10話を見たあとにこの7分を見ると、乃木が何を警戒していたのかが変わって見えます。第1シーズン全10話とVIVANT2はU-NEXTで見放題配信されています。
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