タイトル / 言語考察
Nの法則
タイトルで唯一「裏返せない文字」が意味するもの
放送直後、SNSで大きく広がった読みがあります。VIVANTの5文字のうち、Nだけが鏡に映せない。そしてNの名を持つ男は、全員が裏の顔を持っている。
言葉遊びとして片づける前に、検証する価値はあります。この作品はタイトルからして仕掛けだからです。
まず事実として確認できること
- V・I・A・Tは左右対称で、鏡に映しても形が変わらない。Nだけが左右非対称
- Nを鏡に映すと、キリル文字の「И」と同じ形になる
- キリル文字の「И」はロシア語で接続詞の「と」にあたる
- 作中の架空国家バルカ共和国は中央アジアに位置し、キリル文字圏の設定
ここまでは文字の性質と設定の話で、推測は入っていません。
指摘されている読み
Nは鏡の中で「И」=「と」に変わる。つまり2つのものを繋ぐ文字になる。
日本とバルカ。乃木とF。別班とテント。この作品は一貫して、対になる2つの世界を描いてきた。Nだけが対称でないのは、Nだけが2つを繋ぐ役割を負っているからではないか。
Nの名を持つ人物を並べる
もう一つの読みが、頭文字Nの人物は全員が裏の顔を持つというものです。実際に並べてみます。
| 人物 | 裏の顔 |
|---|---|
| Nogi 乃木憂助 | 商社マンでありながら別班。さらに別人格「F」を持つ |
| Nozaki 野崎守 | 公安の刑事でありながら、第13話で拉致事件の首謀者と判明 |
| Nokoru ノコル | 実業家の顔を持ちながらテントの幹部 |
| Nogon Beki ノゴーン・ベキ | 正体は日本人の乃木卓。テントの指導者 |
| Nagano 長野利彦 | 丸菱商事の専務でありながら別班員 |
5人。全員が二重の立場を持っています。そして長野が該当することが、この法則の説得力を一段上げています。第12話で正体が判明したばかりの人物が、後から法則に当てはまった形だからです。
反証を探す
ここからが検証です。当てはまる例だけを集めても法則にはなりません。
頭文字Nなのに裏の顔がない人物
現時点では見当たりません。主要人物で頭文字がNなのは上記5人です。
裏の顔があるのに頭文字がNでない人物
こちらは複数います。Shinjo 新庄浩太郎は公安でありながらテントのモニターでした。Yamamoto 山本巧も同じ立場です。Ali アリはGFL社社長でありながらモニター。Dram ドラムは外国の組織の人間です。
つまり「Nなら裏の顔がある」は成立しても、「裏の顔があるならN」は成立しません。法則としては片側だけです。
ただし片側だけでも意味はあります。頭文字Nの人物には例外なく裏がある。これが偶然でないなら、名付けの段階で意図が入っていることになります。
ここから先は当サイトの読みです
元の指摘に一点だけ付け加えます。Nは鏡に映せない、つまり「裏返せない」唯一の文字です。
裏の顔を持つ者たちのイニシャルが、唯一裏返せない文字である。ここには逆説があります。
彼らは表と裏を使い分けているように見えて、実は裏返っていないのかもしれません。乃木は商社マンを演じているのではなく、商社マンでもあり別班でもある。ベキはテロリストを演じたのではなく、孤児を救う者でもあった。裏の顔とは、隠された別の姿ではなく、最初から同時に存在していた姿だった。
Nが鏡の中でも形を保ち、しかし別の言語では別の意味を持つように。同じ形のまま、読む文脈によって意味が変わる。
この説の確度
憶測です。文字の形と設定は事実ですが、そこに制作意図があるかは分かりません。
ただし判断材料はあります。この作品はタイトルからして多義的です。VIVANTはフランス語で「生きている」を意味し、同時に作中では別の意味を持たされてきました。名前や言葉に意味を仕込む作品であることは、すでに実績があります。
検証可能な形にするなら、こうです。第14話以降に登場する人物で、頭文字がNの者がいれば、その人物は裏の顔を持つ。役名が未発表の新キャラクターがいる以上、この予測は近いうちに答え合わせができます。
配信情報
タイトルロゴを確認する
各話冒頭のタイトルロゴは、意識して見ると印象が変わります。第1シーズン全10話と第2シーズンはU-NEXTで見放題配信されています。
出典
- 日曜劇場『VIVANT』公式サイト 登場人物、およびタイトルロゴ
- 第1シーズン・第2シーズン第11話〜第13話の放送内容
- Nの非対称性とキリル文字に関する着眼点は、放送後にSNS上で広く共有されていた論点を再構成したもの。個別の投稿は転載していない